22フレットフェチ

ラージリバースストラトフェチに続く、ギターフェチシリーズ第2弾。

22フレットとは?何の話?

まず、「22フレット」についての説明。

ギターには「フレット」といって、音の高さを変えるための金属の帯が指板にはめ込まれている。指で弦を押さえたとき、このフレットがあることで正しい音程が出せるようになっている。詳しくは Wikipedia - フレットを参照のこと。

Fender というメーカーが作ったストラトキャスターやテレキャスターは、Gibson 社が作ったレスポールや SG と並んで、現在でも代表的なエレキギターの種類の一つである。しかし Fender 系のギターはフレット数が21フレットのものが多く、一方 Gibson 系のギターは22フレットまであるのが通常。たったこの1フレットの差だが、これが大きな違いなのである。

ここではそんな Fender 系の21フレットギターに嘆きつつ、22フレットに思いを馳せていこうと思う。

22フレットがあることのメリット・デメリット

22フレットが存在することで、21フレットのギターとはどんな違いがあるのかまとめてみた。

22フレットがあれば、22フレットを使用した曲のコピーができる

主に Gibson 系のギターを使用しているギタリストのソロには、ちょくちょく22フレットが使われる。有名どころでは Char の Smoky のソロに出てくる、22フレットでの1音チョーキングなどだ (ちなみに Char の場合はムスタングを使っているが、ムスタングは22フレットある)。こうした曲のコピーの際に21フレットまでしかないと、コピーができないのである。

苦肉の策で、21フレットで1音半チョーキングをすることで、22フレットでの1音チョーキングと同じ音を出そうとするのも、多くの場合は不可能ではない。しかし Larry Carlton の Room 335 のソロの終わりや、高中正義の Jumping Take Off という曲のラストなどで使われる22フレットの音は、21フレットで半音チョーキングして22フレットの音を出す、という暇がない速さだ。22フレットを使う曲のコピーに21フレットしかないギターを使うのは非現実的だといえる。

22フレットがあれば、開放弦の2オクターブ上の音が出せる

曲のコピーの話にも似ているが、22フレットで1音チョーキングをすると、24フレットを押さえたときの音になる。これは開放弦のちょうど2オクターブ上の音になり、キリが良いのである。

21フレットまでしかないと、21フレットで1音半チョーキングしないと同じ音が出せない。カッタウェイに近く、ごちゃごちゃしたハイポジションでの1音半チョーキングは若干面倒である。22フレットがあれば1音チョーキングで済むので演奏が容易になる。

22フレットがあれば、Gibson 系のギターをずっと使ってきた人が違和感なく Fender 系のギターを使える

Fender 系のギターに22フレットが欲しいと思う人は、22フレットがあるギターを使ってギターを始めた人が多いのではないだろうか。

僕もレスポールでギターを始めたため、21フレットまでしかない Fender 系のギターを持つと違和感があった。実際、Fender Japan ST68RH という21フレットまでしかないストラトを購入してからも、この違和感は拭えず、このギターに22フレットを増設することを検討している。

このように22フレットあるのが当たり前だという感覚があるギタリストにとって、21フレットまでしかないという違和感は、たとえ実際に22フレットを使用することがない場合でもプレイに影響してくる。どことなく不安で、様子を伺いながらギターを弾くような感覚になるのである。

同じように、24フレットギターをメインに使っている人は、21フレットだけでなく22フレットのギターでも違和感を覚えると思われる。何より、自分の中に「このギターは21フレットしかない」という違和感が残っていることが一番の問題なのである。

デメリット : ツバ出し22フレットの場合、トラスロッドの調整が面倒になる

ここまで22フレットがあることの利点を挙げたが、今度はデメリット。

Fender 系のギターは、ボディとネックの合体部分 (ネックポケットの部分) からネックのトラスロッドを調整できるようになっている。しかしツバ出し22フレットのネックが載っている場合、ツバ出しの部分が邪魔になり、ネックをボディから外さないとトラスロッドが調整できなくなってしまう。

「ツバ出し」とは、Fender 系の21フレットのギターと同じスケールを保ちながら22フレットを載せたネックのことで、ネック自体の長さは21フレットのものと同じだが、指板の部分だけ板が延ばされており、そこに22フレットを打ってあるというもの。

  • 参考 : MusiCrown - 各部の仕様・パーツについて (リンク切れ) - ベースのツバ出しの画像。ベースは20フレットのものが多い中、ツバ出しによって21フレットを付け足しているものが増えている。Fender 系ギターにおけるツバ出し22フレットもこれと同じような形で指板が付け足される。

この伸ばされた指板の部分が邪魔になり、そのままではトラスロッドの調整ができなくなってしまう。このデメリットを解決するには、ツバ出しにならない22フレットネックを作り、ボディのネックポケットを加工して全体のスケールが変わらないようにしてネックを載せる、ディープジョイントという方式でギターを作るしかない。これはツバ出しネックの交換よりも大掛かりなリペアが必要になってしまう。

21フレット派と22フレット派

Fender 系ギターに22フレットを求める人と、21フレットで十分だという人がいる。それぞれの言い分と反論をネット上で見ていたので、少しまとめてみる。

例えば、曲のコピーに関して、「22フレットを使うなら、他のギターを使えばいい、わざわざ Fender 系のギターを22フレットにしてまで使わなくても…」という意見は多かった。これに対しては、僕は以下のように考えている。

確かに、コピーということを考えると、原曲で使われているものと同じ種類のギターを使わないと音色も似ないし、それはそれで確かな方法であろう。しかし、好きなコピーすると同時に、Fender 系のギターの音色が個人的に気に入っていて、その音色で22フレットの音程を出したいという場合は、22フレットの Fender 系ギターが欲しくなるワケである。

次に、「21フレットまでしかなかったら、その中でなんとか表現するのが創造性のあるギタリストというものだろう」という意見があったが、これはギターを弾く目標が全く違う人の意見であろう。その中でなんとかしたい人はそうすればいいし、その枠をはみ出して22フレットを使いたい人はブラッド・ギルスのように22フレットを継ぎ足せばいいのである。「創造性」なんて言葉でとやかく言ったところで無駄だ。

「ヴィンテージモデルに22フレットを求めるのが悪い・モダンなモデルなら22フレットはいくらでもある」というのは、確かにそのとおりであろう。Fender USA の American Standard や Highway One、American Deluxe など、最近のほとんどの Fender 系ギターは22フレット仕様のモデルが売られている。リイシューの多い Fender Japan でも、楽器店オリジナルモデルやシグネチャーなら22フレット仕様のものがそこそこある。しかし、それでもヴィンテージモデルに22フレットを求める人がいるのは、フレット数以外はヴィンテージ仕様が好き、という人なのであろう。

例えば僕は、Fender Japan ST68RH という1968年のストラトのリイシュー品と、Fender Japan TL52 という、1952年のテレキャスのリイシュー品を持っている。それぞれ、バレット・トラスロッドではないラージヘッドで貼りメイプルという60年代のスペック、3連サドルのバタースコッチブロンドというスペックが好きで購入した。しかし、どちらもヴィンテージのリイシューなので21フレットしかない。

そこで22フレットがあるモダンモデルを探してみると、例えば Fender USA Highway One Stratocaster や、Fender USA American Deluxe Ash Telecaster は、カラーや外見はそっくりで22フレットが付いている。しかしよく見ると、Highway One は貼りメイプルではなく70年代スタイルであり、American Deluxe Ash は6連サドルだったりと、他の部分もモダンなスペックになっていて、なんというか「モダンすぎる」のである。

ちなみに、僕の ST68RH は現在も21フレットのままだが、TL52 の方は22フレットのネックに交換された中古品を購入した。このように、中途半端にヴィンテージスペックが好きな22フレット派は、その人の好みによって「ニコイチ」などで好きなスペックのギターを作るしかない。

「そんなにフレットが欲しいなら24フレットのギターにすればいいではないか」という意見は少しお粗末な気がする。

21フレットのギターにツバ出し22フレットを載せるのは、トラスロッドの問題を別にすれば、スケールも変わらず何の不具合もなく済む。しかし24フレットとなると、そのままのスケールではフロントピックアップの位置まで指板が伸びてしまい、またボディのシェイプもそのままでは弾きづらくて仕方ない。つまり24フレットにするにはスケールを変えて、ボディシェイプも直す必要がある。

ここまで来たら、好きなギターの形でフレットだけ付け足したい、というレベルの話ではなくなってしまう。Fender 系のギターのシェイプにこだわっているということは、そもそもそこまでのフレット数が必要なワケではないのだ。

最後に「22フレットが載っているストラト・テレキャスは見栄えが悪い」という意見。最初は「は?」と思っていたのだが、よくよく見てみると、なるほど納得の違和感があることに気付いた。

実際にギターを弾いているときは、22フレットがないと違和感があるのだが、スタンドに立てかけてあるギターを見ると、22フレットがあることでそのギターに違和感があるのである。

多分ネックのギリギリ端のところに22フレットが打たれていて、21フレットのものより指板がフロントピックアップに近付いていることで、どことなく窮屈に見えるのである。これはぜひ楽器屋などで実物をチェックしてみてほしい。見栄えから逆に21フレットギターで良くなってしまうかもしれない…。

21フレットで十分だという人の一部は、ヴィンテージのスペックに対するこだわりがあって、22フレットを欲しいと思っている人に反論してくるようである。つまり、お互いがそれぞれの好みでしか話をしていないのである。

好みの問題である部分に「それはおかしい」「こうあるべきだ」という話し合いは最初から何も生まない。21フレットで十分な人はそのままお好きにどうぞ、22フレット欲しい人はこの次の章へ読み進めていただきたい、ということである。

22フレットを手に入れる方法

最初から22フレット仕様のギターを購入する以外に、現在所有している自分の好きな21フレットギターに22フレットを付ける方法を考える。

22フレット仕様のネックへ交換する

先ほどの例に出した Fender Japan TL52 という21フレットギターに、22フレット仕様のネックを持ってきて取り付ける方法。

別のブランドでも良い人は構わないが、ボディと同じブランド (ここでは Fender ブランド) にこだわる場合であれば、22フレット仕様のネックが載っているモデルを探す。例えば先ほども出てきた Fender USA American Deluxe Ash Telecaster や、Fender Japan TL-SPL というモデルなどだ。

ボディも込みでそのギターを購入して目的のネック以外は売り払う、というやり方か、欲しいモデルのネックのみをネットオークションで探して落札する、というやり方かは人それぞれだが、とにかくそのネックを手に入れて取り付けよう。

ここで気を付けなくてはならないのは、ネックを購入する際に取り付けるボディとの寸法が合っているかを調べておくことである。せっかく買っても寸法がズレていては組み込めない。また、ボルト穴の位置も違うことが多いので、基本的にポン付けできるかは怪しい。ある程度は自分で改造できる人でなければ、リペアショップに組み込みを依頼した方が良い。

22フレット仕様のネックをオーダーする

先ほどの例に出した Fender Japan ST68RH という21フレットのストラトは、貼りメイプルという60年代仕様のネックである他に、リバースヘッドといって、ヘッドの形状が通常のものとは異なる。リバースヘッドながら60年代仕様の貼りメイプルネックで22フレット、というスペックを満たしているモデルは売っていない。

このように、自分の好みにうるさい人は、ネックのみをオーダーメイドで作ってもらおう。工房にもよるが、貼りメイプル指板やラージリバースヘッド、フレット数や指板の R のキツさなど、自分の好みに合わせて細かくネックを作ってくれる。

ひとつだけ難点といえば、できあがったネックに Fender のロゴが貼られないことだろうか。元々は Fender だったのに、一見するとどこのギターか分からない代物になってしまうのである。ブランド名を気にする人はここが気に入らないかもしれない。

21フレットのネックに22フレットを付けてもらう

オーダーメイドネックで Fender のロゴを失ってしまうのが嫌な人はコチラの方法を。現在のネックの指板エンドに22フレットを付け足してもらう、ツバ出し加工をリペアショップに依頼するもの。

ツバ出しは、21フレットの先の余白部分を削り取り、そこに似たような木材を貼りつけて指板を伸ばし、そこへ22フレットを打ち込む、という加工方法。

多くのギター工房で扱ってくれるツバ出しによる22フレット追加だが、ネット上の一部の書き込みには「ギターの音が変わってしまって後悔している」「ツバ出しするくらいならオーダーメイドネックの方が安心」という話もある。もし本当に大切なギターのネックの場合、結果が気に入らなかったら取り返しのつかないことになるので、リペア依頼の際は十分に注意して依頼しよう。

以下はネット上で見つかったツバ出し加工を行った人のページ。

よほど今のネックにこだわりがなければオーダーメイドか別のギターからのネック交換、どうしてもそのままのネックが良ければツバ出し加工、という感じだろうか。